情報交換の必要性について

次のような話を聞いたことがある。

ある国の王様が、その国で生まれてくる赤ん坊を集めて「お乳は与えるが、いっさい話しかけない。大人の話し声も聞かせない。」という実験を行った。そのようにすることで赤ん坊同士がコミュニケーションをとるために、自然に言語が発生するはずだと王様は考えたらしい。


実験の結果は、「赤ん坊はみんな死んでしまった。」ということである。人間の「神経系」「内分泌系」「免疫系」はつながっており、母親とのコミュニケーションにより神経系が活性化しないと、内分泌系や免疫系も活性化せず、結局、育たないということのようである。


一方で、母親の話しかけに対して赤ん坊が反応しないような場合には、母親はやる気がおきずに育児を放棄してしまうという話を聞いたこともある。

母親と赤ん坊の間に愛情が発生し赤ん坊が育てられるためには、どうやらコミュニケーションが必要と思われる。



ミームと宗教 - cofe_arabiの日記



ミーム(文化遺伝子)について
(この文章は自分なりにまとめてみたものです。推測で書いていることろがあり、誤り、勘違い、思い込みなどがあると思われます。なお、宗教や神を冒涜するつ
もりは毛頭ございません。むしろ逆の立場です。)

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クローンについては、ヒトラーのクローンの話が例えとしてよくでてきます。ただヒトラー
の細胞からクローンを造っても、育つ環境によって必ずしも同じ性格の人物にならないとい
うのが一般的な見方のようです。
またオオカミに育てられた少女の話からもわかるように、人間は人間の遺伝子を持っているだけ
ではいわゆる人間にはなれません。幼児期にまわりの人間から教わる文化、言葉、人間とし
てのしぐさ、善悪の概念、価値観、風習、礼儀、学問などもろもろが備わって初めて人間として
一人前と言えます。これらは遺伝子レベルで親から子に伝わるのではなく、脳から脳へとコピー
されて伝わっていきます。このようなものをリチャードドーキンスミームと呼んでいます。
人間はミームを受け継がないと遺伝子だけでは人間になれません。人間は脳を発達させたせ
いで、親から遺伝子をもらうだけでは、人間としては不十分なわけです。つまり人間は
遺伝子の枠だけでは説明できない、遺伝子からはみだした存在になりつつあるのではないか
と思います。遺伝子により形作られる肉体がハードウエアとすれば、ミームはそこに載せられる
ソフトウエアと言うこともできます。ミームは文化遺伝子と呼ばれることもあります。


人間は社会的に成功して自分の会社を持ちたいとか、自分の銅像を立てたい、とか自分自身
の思想や考え、価値観を世の中に広めたいという欲望があります。これはいわば自分の分身
つまりコピーを世の中に残したいという欲望です。自分自身のミームを世の中に広めたいと
いう欲望ととらえることができます。人間は自分の子供を作って遺伝子を残したいという
欲望と同時に自分の分身としてのミームを世の中に残したいという両方の欲望を持っている
といえます。

英語の辞書を調べるとmemento(思い出の種、記念品、かたみ)という言葉が見つかります。
推測ですがミームという言葉はこのmementoに関係あると思います。

お酒を飲むと、やたら説教したがるおじさんは自分の価値観(ミーム)を他の人の
脳に植え付けたい欲望を持っているのかもしれません。
インターネットのホームページに自分の意見や情報を載せる行為は自分のミーム
他の人の脳にばらまきたいという欲望の現れかもしれません。

自分の価値観を世の中に広めたいと思ったとしても、その価値観は本当は自分が創り出
したオリジナルなものというよりは、生きてきた過程で周りから教わってきたことが
ベースになっていると思われます。誰か他の人の脳で考えられた価値観のコピーを
自分の価値観として採用している場合があります。
世の中のいわゆる普通の人が「政治家が悪い」などという時の意見は
実際は新聞やテレビで評論家が言ったことをそのまま自分の意見と思い込んでいるケース
が多いと思われます。
自分の思想や価値観といっても、その多くは他の人の価値観のコピーの寄せ集めです。
さらに周りの人や、子孫に伝えていくことで、他の人の脳にコピーされ、他の人の価値観
として採用されていくと言えます。その過程で少しずつ変化したり進歩したりします。
つまりミームは、世代から世代へと受け継がれ、進化もします。

「神が実在する」とか「死んでも魂が残る」といった概念は昔の人から人へと何代にも渡
って受け継がれてきた、ミームと言えます。
ミームは人間の脳から脳へとコピーされて増えていくという性質から、コンピュータ上で
増殖するコンピュータウイルスに似ています。もし自分自身のコピーを作って増えるウイ
ルスが生命体と言えるのであれば、コンピュータウイルスやミームも同様に一種の生命体
です。「神は少なくともミームという形をとって生きて実存している」と言ってもあなが
ち間違いではないでしょう。

またある人が死んだとしても、その人の価値観、思想や教え(つまりミーム)を周囲の人が
引き継いでいれば、その人のミームはまだ生きていると言えます。魂をミームと考えれば
その人の魂はまだ生きているといっても、あながち間違いではないでしょう。「あの人は
死んでしまった。しかしあの人の魂は、生き残った我々の心の中に生きているのだよ。」という
ようなセリフを映画やドラマで聞いたことのある方はいらっしゃるでしょう?「その人の
精神や魂は少なくともミームという形では残る」ということになります。

人の脳から脳へとコピーされていくミームのなかでも、宗教の教えは強力なミームミーム
集合体ということができると思います。また強力なミームは、人々を洗脳して、何かの
一連の行動を起こさせることができるでしょう。ウイルスと同様にミームは、時には非常
に危険な振る舞いをすることがありえると思われます。
あるミームと別のミームが、戦いを起こすこともあると思われます。我々はしばしば
議論してどちらの意見が正しいかを争うことがあります。どちらが強いミームを持っているか
という戦いと言えます。戦いに勝利したミームはより多くの人に「より正しい価値観、概念」
として広まっていくことになります。人間は過去の歴史において、異なる信仰の人間同士が
対立して殺し会うという経験をしてきています。これは実はミーム同士の戦いだったと捕らえる
こともできます。
Aというミームは対立するBというミームを滅ぼすために、「脳にBミームを持っている
人々」をすべて殺すようAミーム人間に命令したかもしれません。



ある宗教では自殺が禁止されています。このように自殺を禁止するミームをもつ宗教は
人々に広まる可能性が少し高いでしょう。なぜならミームは人の脳に住んでいるため、その
人が死んでしまうとミームを伝える媒体が減ってしまうことになります。自殺を禁止す
ミームを持つ宗教はミーム自身を伝える媒体が減る可能性が低くなり、広まりやすい
かもしれません。逆の例として集団自殺をするような教義(ミーム)をもつような宗教は
あまり広まらないでしょう。なぜなら熱心な信者は充分な布教活動をしないうちに死んで
しまうからです。


またミームは生殖(つまり遺伝子のコピー)で増える必要はありません。一般的に結婚
する人は、家庭や子育てに気を取られてしまい、ミームを広める行動はおろそか
になってしまうと予想されます。この点で宗教における
布教者はミームを増やす意味から結婚しない人のほうが望ましいと思われている傾向が
あるかもしれません。


実際には自分の信条や価値観を人に広めようとしても、なかなか広まるとは限りません。
価値観を強引に押付けられるのは誰でもいやだからです。逆に自分が失敗した話などは
自分の意志とは逆にに、あっと言う間に広まってしまうかもしれません。「悪事千里
を走る」の例えのとおりです。
一般的にある人の失敗談は、他の人の脳に優越感という快感を与えるため、他の人の脳に
広まりやすいかもしれません。
何かしら人間の脳にとって魅力的で、他の人に伝えたくなるような性質を持っているもの
は広まりやすいミームと言えます。

不幸の手紙幸福の手紙、災害やパニック時に広がるデマなどもミームと言えます。
心の不安に付け込んで増えていくミームもあると思われます。
人間が非常に不安になっている時に、その不安を和らげてくれるような情報があると
信じたくなってしまうでしょう。
さみしい心のすきまをうめてくれるようなミームに出会うと思わず信じてしまいたく
なるかもしれません。


ミームにはいろんな種類のものがあり、一概にいいものとか悪いものとか決められない
ように感じます。

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他の生物はともかく、人間の場合には遺伝子だけでなく育った環境(教わった文化、価値観)
が備わってはじめて人間としての性質がでてくるわけで、環境要因が大きいといえます。
利己的な遺伝子」で知られるリチャードドーキンズは生物を遺伝子機械にたとえています
が同時にミームを定義して神や魂の実存を説明しようとしているかのようです。さらに脳や
文化を充分に発展させた人間は、既に遺伝子の呪縛から解放されることが可能であるという
一筋の希望の光を差し示しています。

リチャードドーキンズの「利己的な遺伝子」は一時ブームとなりましたがよい本なのでお勧
めです。ただし普通の生物は遺伝子が主体であって「ニワトリは次のニワトリを作るために
卵を生むのではなく、卵は次の卵を生むためにニワトリを作るのだ」という考え方には、
価値観の逆転があって頭がくらくらするかもしれません。

又は「生物は卵を生む」のではなくて「卵は自分が有利に生き残るために、手足やその他の器官
武装して生物の形となる」という価値観の逆転のです。
価値観の逆転と言っても「人間に生殖器がついている」のではなく「生殖器に手足や頭や
胴体がついているのが人間だ」という考えに結びつくとしたら、ちょっと受入れにくいですね。
(みんなどうりでエッチなわけだと納得のいく人もいるかもしれませんけど。実は人間が
エッチな理由についても脳の発達とミームとに基づいて説明できます。他の動物の赤ん坊に比べて人間
の赤ちゃんは一人前になるまでに、かなりの手間と時間を取られます。なぜなら人間の赤ちゃんは
頭が大きいため、充分に成長する前に出産されます。充分に成長してからでは頭が大きすぎて母
親の産道を通らないからです。未熟児で出産され、かつ一人前になるまでにたくさんのミーム
教え込まなくてはならず、母親だけでは労力的にも経済的にも負担が重過ぎます。母親は父親が
子育てに協力してくれるよう自分のそばに引き止めておく必要がありセックスアピールが強く
なりました。そうして赤ん坊が育つまでの間、夫婦のきずなを強める手段としての性行為や
愛情という概念(ミーム)が定常的に必要になったのです。?)

やはり人間は、遺伝子に操られる機械ではなくて、脳に自意識とを持ち、理性と道徳に基
づいて行動する主体としての存在であると考えたいものです。リチャードドーキンズがミーム
という概念をわざわざ持ち出した理由もそこにあるようです。

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人間の脳は遺伝子によって決められたフラクタルな構造をしています。
その人間の脳に宿る文化遺伝子(ミーム)が、いわゆる遺伝子を操作することができるように
なっってきたことは、ひとつの循環(リング)ができたことを意味します。なんかちょっと
怖いですね。

体外受精などの生殖医療、クローン技術、遺伝子組み替え技術などを、我々がどのような
価値観(ミーム)で使用していくかで、おおげさにいうと我々の進化の方向が変わってきます。

http://www.mfi.or.jp/komo/meme.htm


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ミームという概念も一種のミームということができます。